笹原亮が綴るベトナムの職人芸

100人百職

APEXベトナムスケッチ提供

 

職人No.004

天秤棒ヤシの実売り

 

 ボクは今年20歳。小学校4年までしか行ってないんだ。その後は田舎(Tien Giang)で農業やってたんだけど、友達がサイゴンのヤシの実売りはいい商売だ、って言うからこっちに出てきたのさ。

 毎朝家の近くでヤシの実を36個買う。なんで36個かって言うと、それしか持てないからさ。1個千8百ドンで買って、歩いて1区まで来て、1個3千ドンで売る。売りきれればそれでおしまいさ。

 雨が降ったりすると売れ残ることもある。そうしたら翌日の仕入れを減らす。なにしろ36個しか運べないんだからしょうがない。

 客はほとんどベトナム人だね。外国人はほんのたまにしか買ってくれない。そんなに高くないと思うんだけど、外国人はヤシのジュース、あんまり好きじゃあないのかなあ。

 友人達と共同で4区に部屋を借りて住んでいる。部屋代が月2万ドン。食費は1日1万3千ドンくらい。田舎に月30万ドンくらい送ると後は残らないねえ。

 休みなく毎日働いて、夜は帰って寝るだけの生活だけど、田舎で農業をするよりはいいんだ。農業は重労働なのに現金収入は少ない。ボクにはヤシの実を売ってる方が性にあってると思うよ。

 田舎には家族がみんな住んでいる。結婚した兄弟も両親の家の近くに住んでいるし、結婚していないふたりの兄弟は両親と一緒に米を作っている。去年は洪水がすごかったけど、家は高台にあるから大丈夫なんだ。

 本当は機械が好きだから、エンジニアになりたいんだけど、なかなかチャンスがない。でも来年あたりにはどこかのバイク修理屋にでも修行に出たいね。そこで機械のことをしっかり勉強して、将来は田舎でバイク修理屋をやれたらいいな。
 農業は嫌いだけれど、家族みんなが助け合って暮らせればいいといつも思っているからね。

【文・構成 : 笹原亮(ジャアク商会)】

 

 

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