笹原亮が綴るベトナムの職人芸

100人百職

APEXベトナムスケッチ提供

 

職人No.007

副警察署長

 

 本官はムオン族出身、ホアビン省Lac Thuy県の警察に奉職して、はや28年になります。
 74年に警察官を志し、警察学校で2年間犯罪学を治めて、ホアビンの町で犯罪警察に籍を置いたのですが、6ヶ月後には現警察署の総務へ配属となりました。

 80年に幼稚園の先生である、ムオン族出身の今の妻と結婚しました。当時は貧しく、署内の9平米の部屋が新婚家庭となったのであります。

 その後土地が配給され、そこに小さな家を建てて現在も暮らしております。
 子供は3人おりますが、2人は警察官を志し、1人はすでに一人前の警察官に、1人は警察学校に通っています。末の娘は高校生であります。
 今は妻共々、給料も上がり、また物価の安い土地でありますので、生活は楽になりました。

 警察官の仕事で一番の思いでは、苦い思い出であります。あるとき数人で窃盗犯逮捕に向かったのでありますが、準備が万全でなく、事前に犯人に察知されて逃げられてしまいました。

 我々が踏み込んだときは犯人の妻と子供が残るだけ。しまった、すぐに追跡だ、と思ったとき、子供心にも親を捕らえに警察が来たと察したのでしょう、子供が気絶してしまったのです。

 我々は犯人追跡をあきらめ、子供を病院に運びました。しかしご安心下さい。犯人は後日しっかりと逮捕いたしました。

 都会には比べるべきもありませんが、最近はこんな田舎でも麻薬、トランプ賭博、売春などの問題が起きております。
 また、田舎ゆえに交通ルールの不徹底や、バイクの運転に不慣れな者も多く、事故も増加の傾向にあります。経済発展はまことに喜ばしいのですが、どうしてもこのような悪しき面を伴うものであります。

 しかし、嘆いてばかりはいられません。本官も今では50人ほどの署員の上に立つ立場、さらに身を引き締めて犯罪や交通事故の根絶に尽くす所存であります。

【文・構成 : 笹原亮(ジャアク商会)】

 

 

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