笹原亮が綴るベトナムの職人芸

100人百職

APEXベトナムスケッチ提供

 

職人No.009

地方の人民委員会議長

 

 私はベトナムで小さな行政区を預かる身ですが、日本のみなさんになじみのないベトナムの行政区を説明するのは大変です。

 日本に置き換えれば××県○○郡△△町の町長といったところでしょうか。もっとも私の下に、さらに2段階の小さな行政区があるのですが。

 私の行政区はKhoan Duという、ハノイから100kmほどの農村地帯で、3,000人くらいの人口があります。
 まだ貧しい地域で、これといった産業もない、典型的なベトナムの一地方です。

 私は高校卒業後、軍隊に入り75年を向かえました。その後故郷であるこの街に戻り、人民委員会で民兵組織のまとめ役を務め、主任を経て12年前に今の仕事に就いたのです。

 その間に結婚し5人の子供がいます。3人は独立しましたが、後の二人と妻は家で農業をして生活を支えています。
 なにしろ私の月給は36万ドンですから、家族の副業なしにはなかなか生活できないのです。

 在任中の大きな事業としては、信用金庫の設立があります。
 何年か前に、地域の活性化を図ろうと、低利子で事業資金の貸し出しを始めました。ところが、大変残念なことに、貸付金が焦げ付いて5年ほどで閉めざるを得なくなりました。一軒あたりの平均貸付額は150万ドン程なのですが、95%の住民が農業で、現金収入が少ないため、返金ができなくなってしまったのです。
 今でも5千万ドン程が未回収です。まことに残念で、今でも悔いが残ります。

 とはいえ、少しずつですが、この地方も経済状態は上向いてきています。それにつれて教育水準も上がってきています。これは7年前に電気が通ったことが大きな原因です。

 また、5年前から始まった国際機関による植林事業も続いていて、植林の仕事で現金収入が得られるようになってきました。

 人民委員会内にも、活動的な若い人材が育ちつつあり、もういつ引退しても大丈夫だと思っています。

【文・構成 : 笹原亮(ジャアク商会)】

 

 

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