笹原亮が綴るベトナムの職人芸

100人百職

APEXベトナムスケッチ提供

 

職人No.011

フエ料理店経営者

 

 わたしはフエで生まれたのですが、10歳になる前にサイゴンに引っ越してきました。それからずっとサイゴンで生活して、結婚し、ごく普通の主婦をしていました。

 でも家事は単調でつまらないでしょう。それで7年前に、ずっとやってみたかったレストランを開いたのです。

 けれどここは、ベンタン市場の近くとはいえ路地の奥で目立たないので、始めはずっと赤字でした。蓄えも少なくなってきて、もう店を続けられないかと悩んでいるとき、常連のお客さんが「味もサービスも悪くないんだから頑張りなさい」と励ましてくれ、新しいお客さんを紹介してくれたのです。

 それから少しずつお客さんも増えて、赤字は解消。今ではすっかり有名になって、ベトナム人ばかりでなく日本人や韓国人、アメリカ人のお客さんもみえるようになりました。何度も足を運んでくださるお客さんも多く、ありがたいことだと思っています。

 最初の頃は自分で料理を作っていましたが、今では専門の料理人に任せています。料理人は南部の人ですが、レシピはフエのオリジナルだし、わたしがチェックしているので、100%本物のフエの味ですよ。

 人気のメニューはバインベオとブンボーでベトナム人だけではなく、外国人にも好評です。日本人はバンカンが好みのようですね。

 ここは狭くて、食事時は混んで暑いので、将来は冷房完備でくつろげる2号店を出したいと思っています。でも料理の味もサービスの質も落としたくはないので、店員教育には一層力をいれていくつもりです。

 サービスを通してベトナムの文化や心を伝えたいと思っているので、外国のお客様にも分かりやすいようにメニューに写真を入れるなどの工夫をしています。

 それでも言葉が通じない為にスペシャルメニューと普通のメニューを誤解されて、普通料金しかいただけないこともありますが、そんな時は店が損をしてもいいと思っています。

 店は毎日空けているので、休日はないんですが、午後のひまな時間には家に帰ってゆっくり休みます。

【文・構成 : 笹原亮(ジャアク商会)】

 

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