
笹原亮が綴るベトナムの職人芸
100人百職
APEXベトナムスケッチ提供
職人No.012
流しのマッサージ師
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路地を縫って歩き、シャカシャカと音を立てて合図する、オイラの仕事は流しのマッサージさ。今でこそ固定客を回るだけで、シャカシャカと合図はしなくなったけど、以前は夕方から明け方まで、自転車であちこち回ったものさ。
出身は北部のビンフックだよ。父は軍で毒物の担当官。ベトナ戦争の後、ロシアに留学して訓練を受けたけど、今は引退している。母は地区の人民委員会の婦人部で働いていた。 地元の高校を卒業した後、仕事がないからHCM市へ出てきた。最初はバンゾー(肉入り餅)を売ったよ。普通は1日3万ドンくらいになるんだけど、雨が降ると全然売れなくて、売れ残りを食べて後は捨てるしかない。その分赤字になるので、見切りをつけて、マッサージを習ったんだ。 1時間あたり1万5000ドン払って、3ヶ月勉強した。それから毎日市内を順番に流す日々が続いた。今、お客は市内に散らばっているので、自転車で回るのは時間がかかる。1日2〜3軒回れるけど、雨が降れば1軒しか行けないこともあるよ。 そうやって稼いで1ヶ月に100万ドンくらいになる。半分を田舎に送って、家賃を払って食べ物を買っても、まだ少し残る。でも貯金はできないんだ。目に持病を抱えているから、定期的に治療しなくちゃあいけない。日常生活に不自由はしないが、放っておくと悪化するかもしれないんだ。手術をすれば完治するんだけど、それにはもっとお金が必要だからね。 最近、昼間の仕事も始めた。飲料水の配達員。朝8時から4時まで働いて70万ドン。その分マッサージは夜の12時には終わりにする。本当は昼間の仕事だけにしたいんだけど、配達員はいつリストラされるか分からないから、マッサージをやめるわけにはいかないんだ。 配達は日曜が休みだけど、マッサージは大雨以外は休まない。時々お金を払ってくれない客がいたり、ホモの客に迫られたり、大変なこともあるけど、技術を磨いていいサービスをすれば、いい固定客が付くと信じて仕事をしているんだ。 今は兄や友達と4人で住んでいるけど、30過ぎたら結婚して独立したい。でもそれは単なる願望だよ、だってまだ恋人もいないんだから。 【文・構成 : 笹原亮(ジャアク商会)】
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