笹原亮が綴るベトナムの職人芸

100人百職

APEXベトナムスケッチ提供

 

職人No.27

暖炉施工屋

 

 暖炉屋っていっても、暖炉だけ作ってる訳じゃないよ。建設業が主な仕事なんだ。暖炉は厨房の炉も含めて、年に1〜2個作るだけさ。ダラットは暖炉のある家が多いけど、ほとんどは昔のフレンチヴィラで、新しく作る人は少ないからね。

 祖父が二人とも建設業でさ、母方の祖父は暖炉の専門家だった。昔、フランス人と一緒にヴィラをいくつも建てて、暖炉の構造を覚えたんだ。

 オレは子供の時から祖父の仕事を手伝ってたから、彼からいろいろ暖炉のことを学んだってわけ。78年からはホーチミン市の建設学校でちゃんと勉強もしたんだよ。卒業後は建設会社で6年働いた。ダラット郊外の水道設備工事にも携わった。

 暖炉の材料、耐火煉瓦はドンナイ産。1個2,000ドンもするんだよ。これを積む時にはセメントじゃなくて糖蜜を使う。チャムの遺跡もこの方法で作られてるよ。昔は砂と糖蜜を混ぜたんだが、75年頃からソームットという白い粉とも混ぜるようになったんだ。火元から遠くなるに従って、さらにセメントを少しずつ混ぜ込むのがコツさ。

 暖炉は形だけは誰にでも作れるけど、見えないところに重要なポイントがある。一つは煙突内に強い上昇気流を発生させるために、煙突をなるべく高くすること。

 もう一つは煙棚を作ること。火が小さくなると上昇気流が弱くなるだろ。そうすると煙は空気より重いから、煙突内を下がってくるんだ。それを外に出さないように貯めて置くところが煙棚さ。これがないと部屋が煙くなっちゃうってわけ。

 最近はフレンチスタイルの家が見直されてきて、暖炉を持つ人も増えてきた。だからもっと経験を積んで、将来は暖炉専門で仕事ができたらいいと思っているんだ。

【文・構成 : 笹原亮(ジャアク商会)】

 

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