笹原亮が綴るベトナムの職人芸

100人百職

APEXベトナムスケッチ提供

 

職人No.29

自動車教習所教官

 

 かれこれ30年ほど、運転を教えてるんだ。75年の後には会社のバスを運転していたこともあるけど、学校ができたらすぐに教官に戻ったよ。運転を教える方が性に合うんだな。運転免許証があれば仕事にありつけるから、運転を習う人はいつもたくさんいるよ。

 昔はジープで教えたもんだ。今は韓国製のセダンだが、やっぱり新しい車はいいよ。普通の車と違うところは、俺が乗る方にもブレーキがついてるってことかな。

 ほとんどはハンドルを横から支えたり、言葉で指示すれば済む。だから滅多にブレーキを踏むことはないが、これがないと事故につながるから、必需品だね。

 ベトナムでは、こうやって運転の練習をした後で、国家試験に合格すれば免許証がもらえるんだよ。もちろん交通ルールの試験もあるから、この学校でもルールを教えている。イヤ、俺は運転専門だから、ルールを教えることはないよ。

 べつに学校に行く必要はないのさ。試験に受かればいいんだ。だけど生まれつき運転ができる人はいないからね、ほとんどは学校で習うんだよ。ルールの他に簡単なメカの仕組みなんかも勉強するよ。

 今は週に40時間くらい教えている。給料は時給計算で1万ドン。これは新任もベテランも同じなんだ。だけど上手に教えれば、生徒が指名してくれるから、やっぱり年の功はあるもんさ。

 運転を教えるのは、国家発行の教官のライセンスが必要なんだ。3年ごとに試験を受けて更新するんだよ。

 難しいのはね、ナーバスになっちゃう生徒。10kmも出てなくても、怖がっちゃう。そういう時はまず、こっちにもブレーキがあるからと安心させて、それからなだめたり、冗談を言ったり。大変だね。

 そんな苦労もあるけど、この仕事が大好きなんだ。だからこれからも続けていくつもりさ。

【文・構成 : 笹原亮(ジャアク商会)】

 

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