笹原亮が綴るベトナムの職人芸

100人百職

APEXベトナムスケッチ提供

 

職人No.30

ネムヌーン屋

 

 ネムヌーンっていうのは、フエやニャチャン、トゥドゥックにもあって、それぞれ少しずつ違うけど、うちのはうちだけの特性だよ。いうなれば家伝の味ってヤツだね。

 豚肉の赤身と脂も少し、朝、市場で仕入れて、すぐにミンチにする。それに家伝の香料を混ぜて練り、竹串に竹輪状につけて、炭火で焼く。

 火加減がまた難しいよ。だからあたしか娘にしか焼かせない。焼けたら2つ割にして串から外し、野菜や漬物、ライスペーパーの揚げたのと一緒に、ライスペーパーでくるんで、秘伝のタレで食べる。

 タレは豆ベースで甘いから、好みで唐辛子のペーストを入れると、ピリッと大人の味になるよ。

 この味は全部母親譲りさ。だから店の名前は母の名前。母は昔、日本のダム建設会社で秘書をしていた。同じ現場で父も働いてた。あたしも林業関係の日本人の通訳をしてたことがあってね、うちは一家で日本贔屓だ。

 通訳ったって英語だよ、日本語はからっきしダメさ。1日数時間でフルタイムの給料を貰ってたからいい仕事だったけど、74年でお終いさ。

 この店はまだ1年。妹が3年くらいやってたけどうまくいかなくて、引き継いだんだ。妹と違って、あたしは串はもちろんタレも全部自分で作るし、野菜を専用洗剤で洗ったりして衛生にも気を配っているから、1日200〜500食くらい売れるよ。

 妹は今じゃあ保険会社で仕事をしてる。上手くやってるようだから、店よりもあってたんじゃないかな。

 客はほとんど地元の人だけど、週末や休みの日には観光客も来るよ。外国人も欧米アジアを問わずたくさん来るよ。

 今はネムヌーンの専門店だけど、将来はチャーゾーやブンも出していきたい。でも娘達は違う仕事をしたがってるからね、いつまで続けられるか分からないねえ。

【文・構成 : 笹原亮(ジャアク商会)】

 

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