
笹原亮が綴るベトナムの職人芸
100人百職
APEXベトナムスケッチ提供
職人No.33
路上床屋
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毎日路上でちょっきんちょっきん、こうやって20年やってきた。そりゃあオレだって店を持ちたいよ。店なら扇風機もあるし、雨風もしのげるからね、客の入りも、単価も違う。
だけどそのためにはお金がいるだろ。何事も資金がないとできないのさ。 実は2年くらいPhu Nuan区で店を持ってたことがあるんだ。だけど大家の都合で続けられなくなっちゃって、それからまたこうやって路上営業だ。 見てごらん、コーヒー屋も麺屋もバイク修理屋もみんな路上営業だろう。ベトナムじゃあ当たり前の風景さ。 ファンテイエットでね、1年ぐらい修行して、それから田舎でしばらく働いてたんだけど、家族みんなでホーチミン市に引っ越すことになった。こういう時オレの商売は身軽なんだ。道具が一揃えあればどこでも営業開始だからね。
だからこうやって家の近所で髪を刈ってるよ。1回5,000ドン。耳掃除をすると+5,000ドンだ。屋根付きの店の2/3、町中と比べりゃあ半額以下だから、お客もそこそこ来てくれる。朝7時から日暮れまで働いて、平均収入は1日5万ドンくらい。家で服の縫製をやってる女房の収入と合わせても5人の子供を養うのがやっとだったけど、いまじゃあ3人独立したから、店のためにこつこつ貯金もできるようになった。 日除け、雨除けのパラソルや椅子は近くの家に置かせて貰ってる。バリカン用の電気は隣のお医者さんから引っ張ってる。お金を払うって言ってるんだけど、小さな額だからって受け取ってくれないんだよ。 大雨が降ったら休憩。疲れた日が休日。そんな気楽な稼業だけど、髪を刈ってる途中で雨が降って来ちゃったら、お客が濡れないようにしながら刈り切っちゃう。そんなとき自分はずぶ濡れだね。 他人の店で働けば、そんな苦労もないんだけど、この業界、給料が安いんだ。今の収入並の所があれば、すぐにでも働くんだけど、そんな話は聞いたこともない。だから当分はこうやって路上で稼いで、将来小さな店が持てればそれでいいんだ。この仕事、身体が動く限りは続けられるんだからね。 【文・構成 : 笹原亮(ジャアク商会)】
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