笹原亮が綴るベトナムの職人芸

100人百職

APEXベトナムスケッチ提供

 

職人No.34

仕立て屋

 

 最近はシャツを仕立てる人が減ってきてさ、仕事は30%くらい少なくなったね。みんな既製品を買うんだよ。気に入ればすぐに着られるからね。

 ちょっと前までは、既製品ってのは中古か高い輸入品しかなかっただろ? だから庶民はみんな、好きな生地を持って仕立てに来たんだ。外国雑誌の切り抜きやお気に入りのシャツを持ってきて、これと同じに作ってくれって。

 いまでもみんなそうやって自分の好きなデザインを注文するよ。あとは口頭で、もっと襟を大きくとか、ポケットはいらないとかね。

 この仕事は、もう20年やっている。フエの店で4年修行して、それからサイゴンに出てきたんだ。最初は5区に店を借りたけど、5年くらいで家の近くに移転した。

 アオザイ以外は婦人服も紳士服も作るよ。アオザイはね、専門の勉強をしなきゃならない。早く店を出したかったから、勉強しなかったんだ。

 今は女房を助手にして、従業員も雇って、毎朝8時から夜9時まで店を開けている。既製品の嫌いな人や、サイズが合わない人が主なお客だね。

 シャツ1着5万ドン。生地代は別だよ。それを2時間くらいで仕上げる。女性用のワンピースだと3時間はかかるね。スーツは2日くらい。上下で50万ドン程だよ。ほとんどの客はリピーターで、中には月に10着くらい作る人もいるけど、普通は年に5着がいいところだな。

 月に100着は作るけど、家賃や人件費、税金、光熱費などで1千万ドンはかかる。それでも市の中心部より家賃は安いんだよ。もっともその分手間賃も安いから、あまり大儲けはできないね。

 この仕事はひとつずつの手順が大事なんだ。慎重に採寸して、客の体型を考えながら慎重に裁断する。順番を守って縫製し、仕上げも手を抜かない。そういう細かい積み重ねが仕上げを左右するんだよ。

 これからはさらにオーダーメイドは減っていくだろうね。だから自分でデザインした服をショウウインドウに飾ったり、他の店に卸したりして、少しでも新規の客を開拓しようと思うんだ。そのためには外国の雑誌や本を見て、新しいモードを勉強しなくちゃいけないよな。

【文・構成 : 笹原亮(ジャアク商会)】

 

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