笹原亮が綴るベトナムの職人芸

100人百職

APEXベトナムスケッチ提供

 

職人No.36

御者

 

オレはダラット生まれのダラット育ち。10年以上も前から、すっと観光用の馬車を操って来たんだけど、最近自分の馬車が安全基準を通らなくなっちゃったんだ。馬車にも車検みたいなのがあってね、厳しいものさ。

 そしたらちょうどこの会社が新しく観光用の馬車サービスを始めるって聞いて、すぐにここで働くことにした。この仕事はタクシーと同じで、歩合で給料をもらうんだよ。

 オレの場合は馬は自前だけど馬車は会社のもの。だから料金の20%が取り分だ。馬車を持ってれば30%くらい貰えるんだけどね。

 1日に2回から、多い時は10回以上も馬車を出す。料金は7万ドンから25万ドンまで、コースや人数によって違うんだよ。コースは3コースあってね、短いので往復8km、40分。長いのは往復14kmで3時間くらいかかるんだ。だから忙しい時は1日中働きづめさ。

 若い時は政府のオフィスで働いていたこともあるよ。それから農業もやった。10年くらい前から、だんだん観光客が増えてきたんで、馬車と馬を買って、この仕事を始めたのさ。

 新しい馬だと、馬車馬に訓練するのに最低1ヶ月はかかる。馬にも向き、不向きがあってね、ダメな馬は1年以上かることもあるんだ。オレ自身かい? 基本を習って、あとは仕事をしながら操作を覚えたよ。

 この仕事のポイントは馬。だからまず馬の性格を完全に把握する必要がある。そうして初めてスムースに馬車を走らせることができるんだよ。後はシートとか、ブレーキとか馬車の手入れをちゃんとやって、客が快適に安心して乗れるようにすることかな。

 外国人の客も多いよ。毎日いろんな国からやってくる。フランス人が多いけど、中国人、韓国人、アメリカ人、オーストラリア人、本当にいろんな国の人が来るんだ。だけどオレは外国語ができないから、そういう人たちにいろんな説明ができないのが残念でしょうがないよ。その点、ベトナム人の客ならいろんな話もできるし、観光案内もできる。その方がオレも楽しめるね。

 将来かい? 本当にこの仕事が好きだからね、これからもずっとこうやって馬車を走らせていければいいと思っているよ。

 

【文・構成 : 笹原亮(ジャアク商会)】

 

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