笹原亮が綴るベトナムの職人芸

100人百職

APEXベトナムスケッチ提供

 

職人No.38

宝くじ売り

 

 あたしはカマウ生まれ。10年前にホーチミン市に出てきたんだけど、7年前に亭主が子供を置いて出て っちゃた。それからしばらくは縫製工場で働いてたんだけど、目が悪くなってね、細かい仕事はつらくなってきた。それで資格も許可も元手もいらない宝くじ売りを始めたんだ。

 夕方5時に「宝くじ代理店」に行ってくじと前日の結果を仕入れる。結果はコピーされてるから、こうやってノートにファイルして、いつでも客に見せられるように持ち歩いてる。

 くじは100〜200枚を定価の8割程度で仕入れて、あとはひたすら売りまくるんだよ。毎日のコースはぜんぜん決まってない。まず常連に売って、後は気の向くまま、足の向くまま歩いていくのさ。時には自転車で遠征して売ることもある。

 道ばたに屋台を構えて売る手もあるんだけど、日に何度か子供の世話に家に戻らなきゃならないし、第一、歩いた方がよく売れるんだよ。

 くじの売値は1枚2000ドン。1〜2枚買う人と10枚くらいまとめて買う人が多いね。週に1度くらい、30枚とか50枚とかまとめて買う人もいて、そういう時はラッキーだね。

 自分じゃあ買わないけど、たまたま売れ残りが当たったこともあるよ。でもそんなことをアテにしたら生活できないからね。2時までならくじの返却もできるんだけど、滅多にしない。仕入れた分は売り尽くすのがポリシーさ。

 くじは、たいてい週に1回、各地方自治体で発行している。例えば月曜はカマウ省とドンナイ省とホーチミン市、火曜はビンユン省とティンヤン省とタイニン省という具合さ。そうやって毎日3種類ぐらい発券されるんだよ。

 当たりくじの最高は5000万ドン。当たった分は売り子でも代理店でも発券元でも現金化してくれる。代理店や売り子は少し手数料をもらうけどね。あたしはもちろん大金は持ってないから、そんなときは代理店に電話をかけて、現金を持ってきてもらうんだよ。

 雨でも猛暑でも、病気の時以外は毎日くじを売ってるよ。それで母子ふたり生活しなきゃならないからね。将来のことなんて考える余裕はないねえ。だから当分こうやってくじを売り続けるに違いないさ。

 

【文・構成 : 笹原亮(ジャアク商会)】

 

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