笹原亮が綴るベトナムの職人芸

100人百職

APEXベトナムスケッチ提供

 

職人No.39

骨董カメラ屋

 

 ハノイの近くで生まれたんだ。北の軍隊にいた時、片腕をなくしちゃった。それで除隊して、20年ほど前に骨董カメラ屋を始めたんだ。カメラが好きだったからね。

 最初は1000台くらいカメラを集めて、家の一部を店にした。幸いドンコイ通り沿いだから、場所はいい。2000年にはソウルのカメラ屋に、店の在庫1300台を全部売った。それからまた1台ずつ買い集めて、今じゃあ700台くらいあるよ。

 ほとんどが新聞広告を出して、ベトナム各地から買い集めたモノさ。フランス、アメリカの時代に多くのカメラが入ってきているから、探せばまだまだたくさん残っているんだよ。あとはアメリカにいる友達が送ってくれたモノだね。

 そうやってフランス、ドイツ、イタリア、日本、ロシア、アメリカなどの古いカメラが集まってきた。ここにある一番古いモノは、フランスのデマリア・ラピーエ・モーリエ製大判カメラで、24×30cmのフィルムを使うんだよ。1900年製で、3000ドルさ。

 カメラの値段はアメリカのカタログを見て、それより安くなるように付けてる。例えばこのフォクトレンダーは70ドルで仕入れたんだけど、売り値は100ドル。カタログでは250-300ドルになってるだろ、だけどコレ、あまりきれいじゃないからグッと安くしちゃうのさ。

 一番の売れ筋はドイツ製だな。やっぱり古くなってもしっかりしてるから人気がある。日本人には日本製のヤシカやキャノン、ニコンなんかが人気だね。

 月に1000ドルくらいの取引があるけど、手元にはそんなに残らない。でも年に2度通ってくる九州の骨董屋さんは、1回に1000−2000ドルくらい買っていくし、韓国にも大口のお客がいる。ここは自宅だし、妻と娘ふたりとで暮らす分くらいは、なんとか稼げるのさ。
 自分でも写真を撮るよ。本当はライカが好きなんだけど、全部売っちゃったから、今はニコンを使っている。店があるから遠出はできないけど、その辺で娘を撮ったり花火を撮ったりして楽しんでるよ。

 店は朝8時から夜8時まで、元旦以外は年中無休だ。古いカメラを見に来るだけでもいいから、ぜひ遊びに来ておくれ。

 

【文・構成 : 笹原亮(ジャアク商会)】

 

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