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トラベルライター養成コースのご案内
このあいだ東京で地下鉄に乗ってフト顔を上げたら専門学校の吊り広告が目にはいった。それ自体は珍しくもないけど(しかし東京にはホントにたくさんの専門学校があるなあ)、気になったのはその中に「トラベルライター養成コース」ってのがあったこと。今ではこういうことまで学校で教えるのか。そこでいったいなにを教えているのか、私などは非常に気になってしまった。
文章の書き方を教えているのか、それとも旅行のしかたを教えているのか。そもそも、そういうことを学んで生かせる職場がそんなにあるということに驚いてしまった。だいたい旅行記作家にそれほどニーズがあるものなのか。あるなら私なども、これほど生活に苦労しないのだが。
ガイドブックほど執筆者の顔が見えない媒体はないと思っている。逆に、顔が見えるガイドブックはわずらわしいものだ。しかし、この「顔消し」作業はじつはなかなかむずかしい。
そういう作業を専門的に教えているとしたら、私は近づきたくない。もちろん、そういうところに通ってた人にもね。
ラオス人の腕時計
ラオスの長距離バスの中で、隣に座った軍服姿のおじさんが言った。
「いい時計をしているね」
私の腕時計はカシオのGショック。必要以上に大きくていかつく、知らない人にはハッタリが効く。
「格好いいだろう?」
私は腕を伸ばして時計を見せる。おじさんも負けじと腕を差し出すと、そこに巻かれているのは古い自動巻きの腕時計。それはそれでよいとして、時間が私のものより40分進んでいる。
「これ、40分早いよ」
「40分? そうか、それならいい。この時計はいつも40分だけ進んでいるのだ」
隣に座っていた男がおもしろがって腕を差し出す。この男の時計も狂っている。不審に思ってもう一人の男の時計を見ると、やっぱりこれも違っている。ひどい人の時計は、なんと4時間も狂っていた。
そのことを注意しても、
「時計が狂ってる? ああ、そうかね」
と笑うだけで、全然気にしている様子はない。
ラオスは本当にいい国だ。
女の子を口説く技
私は昔から洋楽が好きだった。私の英語力は教室やテキストで身につけたわけではなく、洋楽と洋画で身につけたものだ。
それが今になって役に立っている。海外で女の子を口説く際に、極めて効果的なのだ。手口は簡単、昔よく聞いた西欧の音楽を直訳して使えばいい。これが非常によく効く。
私が好きなのはドアーズの 『タッチ・ミー』 かな。そのまま翻訳すれば、みんなうっとりしてしまう。『ラヴ・ミー・トゥー・タイムス』 もいいかもしれない。
ゲストハウスの廊下では、北欧系の旅行者がレッド・ツェッペリンの 『移民の歌』 を歌っている。まったくそのものズバリだねえ。詩の内容は関係ないけど、金髪を振り乱して 「アアア〜ッ、アー!」 とシャウトすれば、下働きの女のなんか簡単に落とせそう。私なんかはベッドでブルーザー・ブロディばりのギロチンドロップを決めてしまいそうだけど、なかなかいい感じだ(意味のわからない人、すみません)。
そう言えば昔、「私はビートルズの 『イエスタデイ』 が好き」 っていう女の子もいたなあ。いやな予感がしてたけど、最後はその詩のとおりになった。あれは彼女のためではなくて、自分のために歌わされたのかもしれない。
今度あの子に出会ったら、ジョン・レノンの 『ハウ・ドゥ・ユー・スリープ?』 を歌ってやるつもりだ。
信心深い人々
タイ人は信心深いとよく言われる。また、そう言うのは日本人が多かったりする。でも、日本人なんて、タイ人以上に信心深いんじゃないかな。
私の家の近所にある道路は、意味もなく曲がりくねっている。理由は、「精霊が宿る木がそこにあるので、まっすぐに道を通すことができなかった」 から。JRの中央線にも同じようなことが起こっていて、運行のじゃまになる木を切るに切れないでいるらしい。成田空港のそばにも同様の事例があるという。そうやって調べていくと、日本国中に同じ話があるようだ。
私は超常現象を信じている。「第六感」 は存在すると思うし、そのおかげで旅先での危機を何度も逃れている。目で見えているものが世界のすべてではけっしてない。「よくわからないけど、なにかある」 というものを、最近は率先して探求するようにしてもいる。UFO観察をしているわけではないけれど、見えないものを見て、聞こえないものを聞くように勤めているのだ。
こういう話を日本人女の子にしても、
「ずいぶんロマンチックなんですねえ」
と冷笑されるだけだが、同じ話をタイ人の女の子にすると、
「あなたは偉い人になれるかもね」
と誉められる。
みんな日本を脱出したくなるわけだよ。
面が割れると
有名な服飾デザイナーの山本寛斉氏がベトナムのレストランで食事をしていた。ちょうどその時、かの地で営業している日系銀行の支店長たちも食事をしていた。
黙っているのもなんなのでと、一人が代表となって山本氏にあいさつに出向いたらしい。しかし、この支店長、名刺を手にして開口一番、
「失礼します、三宅一生さんですね。私、××銀行の××というものでして……」
私も以前チェンマイで有名なタイオタクの前川健一さんにそっくりに人を見かけ、「前川健一さんですか?」 と言ってしまって大恥をかいたことがある。ヒゲに長髪だったらみな当人なんてわけは、まったくない。その話を当の前川さんに伝えたら、
「バンコクで、全然知らない人から唐突に 『スナーリーのテープが……」 なんて言われて驚くことがあるんだよ」
なんておっしゃってた。
幸いにも、私の顔はまだ割れていないようで、不埒なことをしても安心か……なんて思っていたら、あるレストランのおかみさんにこう言われた。
「この間、歩道でひどくキョロキョロなさってたんですが、取材でしたか?」
まずいなあ。これからはトイレもうっかり探せない。あぶない店に入るときも、注意しなきゃ。
失われた愛の日々
先日、めったに連絡を取り合わない知人から電話がかかってきた。
「タイって売春婦が多いんだって? じゃあさあ、性病なんかも多いわけ?」
用件はすぐにわかった。彼はどこかで性病をもらってきたのである。
「だから、どうしてほしいんだよ!」
どうやら淋病を治す内服薬をくれと言いたいらしい。
その薬は、たしかにタイなら薬局で買える。しかし、私はブラックジャックではないので、そんな薬を持ち歩いているはずがない(ブラックジャックは外科医だったっけ)。
彼にはさっさと医者に行けと言ってやった。快楽の果てにはツケがまわってくるものなのだ。
いったいどこで病気をもらったかとたずねたら、「テレクラで知り合った女子高生からだ」 と言う。
「制服を着ててさ、こりゃラッキーって思ったら、アンラッキーもいいところだ。そんな経験ない?」
ないよ、そんなもん。だって俺はコンドーム支持者だもん。身のまわりに 「できちゃった結婚」 させられた知人が多いので、昔から愛用しているのだよ。
「いやあ、日本もタイなみに危なくなったね。」
なんてこの男は言ってるが、バカなことを言うんじゃない。管理の進んでいるタイとは違って、日本のほうがよほど怖いんだぜ、本当は。
注:関連原稿が、こちらに掲載されています。 |