タイの深部を探るエッセイ

ブライアンの世界 4

協賛 バンコク週報

提供 ジャアク商会

 

 

タイ人に似た人

 私はヴェルディ川崎の前園選手によく似たタイ人を知っている。ヒジョー〜によく似ていて、親戚かもしれないと勝手に思っているほどだが、じつはこの人、女性である。
 私はほかに、横浜マリノスの城彰二選手に似たタイ人も知っている。この人も、困ったことに女性だ。
 私はまた、スピードスケートの清水宏保選手に似た人も知っている。もうおわかりだと思うけど、この人も女性なのであった。
 いやいや、彼女たちはみんな魅力的なのですね。でも、彼女たちを見るたびに、出身はどこなんだろうと思ってしまう。あるいは、日本のそっくりさんたちのほうの出身地を探ったほうがいいのかもしれない。10世代くらいさかのぼると、先祖はみんなタイかクメール人だった、なんてことになるんじゃないかな。
 このあいだラオス南部の山の中で、フィリピン人の出稼ぎ労働者たちと親しくなった。こちらが日本人とわかると彼らはそろって言った。
「お〜、日本人か。おれたちの隣の国に住んでるわけだな」
 私は日本の隣の国は韓国だとばかり思っていたのだが、実際は違うのかもしれないとそのとき思った。日本の隣は、ひょっとしたら南方諸国なのかもしれない。
 それにしても、なぜタイ人の女性に似ているのか?
 そう思ってスポーツニュースを見ていたら、セレッソ大阪の森島選手が出てきた。彼に似ているタイ人も知っている。本当によく似ている。その人は男だが、実は女性なのですね。トム・ボーイなんだけど、まったくややこしい。

 

 

トイレはなぜいつも詰まっているのか

 タイのトイレに入るといつも思うことがある。それは、
「どうしてこんなにつまっているのか?」
 ということだ。
 公衆トイレの男性側は、必ずどれかがつまっている。8割がたがつまっている。ショッピングセンターも国際空港ビルも、どれもこれもがつまっている。現状では、つまって逆流してアワを吹いていない便器を探すほうが困難だ。タイ在住の日本人のみなさん、そうじゃないですか?
 しばらくすれば染み込んでマイペンライなのかもしれないが、駆け込んだ人たちが追加して、結局は水びたし。「フンづまり」 という言葉はあるけれど、これはいったいなんと表現すればいいものだろう。「この尿づまりめ!」 なんて言う人は見たことも聞いたこともないが、次に機会があったら言ってやろう。
 トイレではないが、知人の家の台所が詰まったので壁を打ち壊してみたら、排水管の太さが上水道と同じくらいしかなかった。こんなところに野菜くずを流せば、つまってしまうのは無理もない。タイの公衆トイレも同じ理屈なのかもしれないが、つまっているのはすべて小便器のほう。なぜかね? 
 配管システムのせいなのかな。タイ語でトイレはホング・ナーム(水部屋)というんだけど、こんな水なんていらないぜ! 
 それで思う。女性トイレはどうなっているのかな? ひょっとして、あちらも水部屋状態……なんてことはないだろうなあ。

 

 

アジアの味はグルタミン酸の味

 タイ料理における味の決め手はなんでしょう? 唐辛子? ニンニク? 違いますねえ。そりゃなんてったって化学調味料でしょう。あの辛さと酸っぱさの間に取り入って旨味を増大させているのはこの薬物。もはや化学調味料なしで成り立つタイ料理はないんじゃないかな。
 あるゲストハウスの食堂の入口に、
『我々の料理がまずいのは科学調味料を使っていないからです』
 と書かれた紙が貼ってあった。ためしに食べてみたところ、味に腰がないというか生臭いというか、たしかにあまりおいしくない……というより正直にまずい。
 見まわしてみると、席に着いているのは宗教がかったなりをした西洋人だけ。経営者も当然のように西洋人だ。タイ人かアジア系旅行者にクレームつけられたから貼り紙をしているのだろうけど、正直すぎるのも考えものだ。化学調味料を使わないなら使わないで、すこしはうまいものを作る努力をしろよ。
 大量にブチこまれた科学調味料のクドい味……。まるで疲れた体にタイのけばけばしい寺院の装飾を見せつけらたようにクドい。しかし、このクドさがないと、タイじゃない。もっと淡泊に、必要最小限だけをもとめた侘び寂び的味覚があってもよいではないか、などと思ってはいけない。それがタイという国なのだ。
 私もタイでは化学調味料入りのタイ料理をたらふく食べている。日本じゃ絶対に食べないけど。

 

 

アメイジング・タイランド

 いまごろなんだと言われるかもしれないが、タイ観光局が 「アメイジング・タイランド」 というプロモーションを始めている。なんのことかと思ったら、「タイで買い物をしましょう」 というプロモーションらしい。観光名所での集客がむずかしくなってきたため、これからは 「安く買い物ができる」 ことを目玉にしたいようなのだ。
 しかし、そのまえに考えておくべきじゃないのか。たしかにタイの観光名所はきれいになった。しかし、人工的にきれいになったものを、わざわざ楽しみに来る旅行者がいるものだろうか。
 タイ人も日本人と同じで、観光というものを変なふうにとらえている。伝統的な行事は組織化され、ただの観光ショーに堕してしまったものも多い。
 ひさしぶりにチェンセーンに行ったら驚いた。この一帯のメコン川は、川岸をすっかりコンクリートで固められているのだ。タイも立派になったと政治家は満足しているのかもしれないが、風情もなにもあったものじゃない。メコンを越えてラオス側から見てみると、まったくおろかな行為だなと思ってしまう。こんなものを見るためにわざわざ海外旅行するバカがいるかね。とくに日本人は、経済発展で失われた素朴さを味わいにやってくるんじゃないか。
 メコンの川底から打ち上がる謎の火の玉とか、絶対に写真に撮れない花が咲く寺院といった世界がある。タイにはまだまだ魅力があるのに、いったいなにを考えてるんだか。

 

 

けっこう危ない国

 新宿の居酒屋で飲んでいたら、頭のおかしいアンチャンに殴られそうになった。その場で殴り返してもよかったが、これとまったく同じ事例で2回も警察署に連れていかれているので、じっと我慢の子であった。
 しかし日本も物騒になったものだ。ちょうどカンボジアの旅から戻ってきて、「さて、平和の味でも楽しもう」 としていた矢先だけに、なんだコレハと思ってしまう。それにしても、いきなり殴ってくるなよな。ほとんど通り魔だぜ。
 ヤクでもやっていたんだろうか。実際、東京の町には酒くさくもないのにフラフラしてるやつが大勢いる。昼間も路上でおかしな踊りを披露している男がいて、一人芝居の大道パフォーマンスと思って見ていたら救急車が来た。どうやらただの錯乱だったらしい。服装が変にきちんとしてたから正常と以上の区別がつきにくかったけど、あれで刃物を持ってたら川俣軍司になるのだろうな。知人のタイ人が、「日本はタイより恐い」 と言ってたけど、そう思うのも無理はないなと痛感した。
 気分悪く店を出て、駅まで戻る地下街にはスーツを着た男が横たわっている。プノンペンで見た兵士の死体のようだ。日本でも近いうちに、こんなふうに街角に死体が転がっていても、だれも驚かない時代がくるのかもしれない。

 

 

 

バンコク週報の読み方

 タイで唯一の日本語新聞、それがバンコク週報だ。読者それぞれに読み方があるだろうが、私の場合、普通の人とはちょっと違う。発売されたばかりのバンコク週報を広げた私がまず最初にすることは、誤植を探すこと。活字の打ち間違いを探すのだ。
 バンコク週報ほど誤植の多い新聞はないと思う。海外生活で日本語能力が衰えたのか、あるいは単純に手元が狂っただけなのか。真実を言うと、日々の作業に編集スタッフが疲れきっていて、文章をチェックする時分には脳がマヒして使い物にならなくなっているのだが、こうした裏事情など一般読者には知る由もない。
 文字が多少打ち間違えられていても、前後がうまく流れていれば、なにを言わんとしているかわかるものだが、だからといって許していてはいけない。「ま、これくらいはいいか」 と寛大な態度でいると、皆様のバンコク週報はどんどんルーズになってしまう。
 日本語現地新聞の誌面はその地の日本人社会の知的レベルを示していると言われている。私などは、おおらかな誌面はミスに寛大なタイ社会を反映しているのだと好意的に受け止めているが、はたしてヨソの地の人たちはそう思ってくれるだろうか。
 読者のみなさん、編集部に愛のムチを与えましょう。そして日本人社会の質的向上を!

 

 

確実にやってくるもの

 タイにかぎらず東南アジアの国々では、時間の観念があいまいだ。時間とはただそのあたりを流れているだけのもので、それに従う必要などまったくないと考えているフシがある。だから彼らになにかを頼んでも、指定の時間に間に合うことがないし、遅れても気にしない。時間通りであったとしても、それはたんなる気まぐれと偶然の所産だったりする。鉄道だって正確なのは始発の時間だけで、その後は他の路線の具合を見ながら走るので、結局は遅れてしまう。
 ならばこのタイで「時間を確実に守る職業はなにか」と考えてみたところ、いまのところ、「ピザ宅配と出張マッサージ」 ではないかという結論が出た。
 どんな場合でも、このふたつだけは間違いなくやってくる。時間もかなり正確で、「30分くらいで行きます」と答えたら本当に30分ほどでやってくる。出張マッサージの場合、彼女たちはタクシーでやってくるが、路地の奥だろうがまったく目印のないアパートに住んでいようが必ず見つけ出してしまう。バンコクのタクシー運転手は道を知らないことで定評があるのに、これはなぜ? 
 真面目に仕事をする気になれば、彼らはちゃんとやれるのである。とすればふだんの彼らは真面目にやってないってことか?

 

ブライアンの世界
トップページへ

 

アジアの中心 ジャアク商会のホームページはこちら

『ブライアンの世界』への声援、激励、ご意見はこちらへ

ジャアク商会総本部

誤字・脱字を発見したら、ぜひご一報を