はがまき+びり

旅で出会った最高の笑顔

 

 

 西アフリカ、マリの首都、バマコ。
 一国の首都とは思えない、赤い土ぼこりに包まれたその田舎町を、私は去ろうとしていた。
 サハラの砂に侵食され、消えつつある黄金の都トウンブクトウ。
 泥のモスクが印象的なジェンネ。
 インディゴ色のターバンを巻いた砂漠の遊牧民トアレグ族。
 水と緑に恵まれたアジアからの旅人は、過酷な自然とそれでも生き抜く人間の生命力に圧倒される。

 フランス語圏のこの国では、バンバラ語かフランス語しか通じない。英語を話せる人は稀で、いつも苦労させられた。それでもこの国の人達がどこよりも印象的なのは、彼らの笑顔が忘れられないからだ。

 朝の町を歩いていると、町中の視線が私に集まる。じっとこちらを見ている子供たちにバンバラ語で 「おはよう」 をいったとたん、ぱっとはじけるように広がるあの笑顔。
 口のきけない靴みがきの少年にキャンディをあげたら、逆にチョコレートをもらってしまい当惑する私に、まわりの人みんなが 「マリのお菓子を食べてくれ」 と笑いかける。
 ことばが通じなくても人間はわかりあえる、そんな月並みなせりふがこれほど身にしみた国はない。貧しさも弱さも忘れさせるあんな笑顔を、私は見たことがない。

 飛行機を待ちながら、緑のマンゴーの木陰でマリの青年デンバとすごした1時間。二人に共通の言語は片言の英単語しかなかったにもかかわらず、私たちの心は確かに通じていた。

 マリは貧しい国だけど、子供たちが僕たちの社会をきっと変えてくれると信じたい。時間はかかるだろうが、君の子供がマリに来る頃には、きっともっといい国になっているだろう。その頃には世界中幸せな人で満ちあふれて欲しいね。

 言葉が通じない分、顔と手と瞳がそれだけ多くを語る。白い歯を見せて笑う彼の笑顔。温かさと優しさに満ちた彼の握手。私の笑顔は彼に何かを伝えただろうか。

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