白ヤギさん

2005

和成冷氣茶室探検記
 

 

 一部タイル張りのアーチ状の入口、その奥は薄暗く2階へと今にも崩れてしまいそうな階段が続いています。昭和30年代の小学校の校舎の階段を20年間くらい放置しておいたような階段です。踏み外さぬようゆっくりと上がりましょう。

 途中一箇所踊り場があり、階段は180度向きを変えています。そこまでくると2階の様子がだんだんと見えてきます。階段正面にはキャッシャーがあり、その前を、怪しげな男女が行き来しています。この時点ではまだ、誰が客で、だれが店員かということはわかりません。

 2階まで階段を上ると左手に腰高のガラス窓がついた小部屋が見えます。ここが、この茶室の心臓部というべき、金魚鉢です。中をじっと見据えてはいけません。目が合った途端に不気味な微笑みが返ってきます。

 金魚鉢の中は物凄い光景で、思わず脳が溶け出してしまったのではないかと錯覚してしまうほどです。一番若くて30半ば、一番上は絶対70を超えているだろうと思われるお婆ちゃんです(果たしてそういう老婆趣味の人もいるのでしょうか?)。

 人数は大体10〜15人くらいで、平均年齢は45〜50といったところでしょうか……。
 油断をしていると、どこからともなく店の人がキャッシャー前に集まってきて一生懸命、

「2時間で200バーツだ、安いだろ! どの娘がいいんだ? 早く決めろ!」

 とこちらに反撃を与えないほどの猛攻撃をかけてきます。ここでなんとか相手の気をそらさないといけないと思い、

「さ、先に部屋を見て良いかな??」

 と言ってしまいました。

 案内されるままにキャッシャー横の薄暗い通路を進んでいくと、引き戸がいくつか並んでいるところに来ました。
 おもむろに、しかし力を込めて引き戸を開けると、そこは畳2枚ほどの広大なスペースがありました。畳といっても団地サイズの一番小さなサイズ程度で、そこに置いてあるのは、薄汚れたエアーマットレス、それが部屋の幅に入りきらずに反り返っていました。
 部屋に窓はなく、まさに独房状態
 これはますますまずい……。部屋も見てしまったし、何とか逃げる手段はないか……。

 悪魔の手先のような店のおばちゃんが、どこの部屋にするんだと迫ってくる。マジでやばい。
 そこで口を出た言葉、よくこんな汚いとこで出たなと思うような言葉、

「ちょっと腹減ったから、飯食いたいんだよ」

 すかさずおばちゃんは、

「ぢゃ、下から出前取ろうか?」

「い……いや、店を予約してあるから……食べてから戻ってくるね」

 と言いながら階段方向に歩き出すと、今度は別のおばちゃんが階段まえでとうせんぼ。

「ちょっ ちょっと飯食ってくるから〜」

 と言いながら、そのおばちゃんの腕の下を潜り抜け階段を駆け下りました。

 階段がぼろいとか、壊れそうとか、言ってる場合いではなく、たぶん、サイボーグ009の加速装置より若干早めのスピードで外へ脱出しました。

 この間約10分程度ですが、人生で一番長い10分だった気がします。

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