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宿を出て、イスラム食堂で麺を食べ駅を目指す。
実は汽車はすべて開遠という少し先の大きな街の始発。わざわざ小さな町に降りなくても、開遠まで行って戻った方が便利だったのだ。そんなこととは知らず小さな駅で降り、危うく野宿になりかけたのだから、情報収拾は大切である。とはいってもここは雲南。そう簡単に先々の乗り継ぎの情報は得られない。町のバスターミナルでも、わかるのはその街のことだけで、先の街のことは行ってみなけりゃわからないのが現状だ。
今日の目的地は石屏。地図で見るとあたりで一番大きな○で表示されているので、始発バスや外国人が泊まれる宿がありそうな町だ。
ローカル列車に揺られて石屏に到着。駅をでると、いきなり未舗装のがたがた道だ。バックパックを担いで、とにかく街と思しき方に歩き出す。左手に温泉があって、屋根に取りつけられたパイプからお湯が道に流れ落ち、鍾乳石状の茶色い固まりになっている。かなりそそるディスプレーだが温泉旅館ではないので宿泊はできない。
「招待所」という看板を探して歩く。あればそこがホテルなので、あまり高級そうな外見でなければ交渉に入る。バスターミナル近くの大きな交差点のそばに看板を発見。部屋を見て値段を聞く。そこそこの部屋でとってもリーズナブル、よし気に入った、ここに決定、と荷物を3階まで運ぶ。帳場に降りて細部を確認。身分証明書をだせと言うのでパスポートを渡すとおやじの態度が変わった。
「すまんが、外国人は泊まれないんだ」
パスポートを渡すまで我々は中国人だと思われていたのだ。中国にはいろいろな人種がいて言葉も通じないことが多いので、外国人だとは思わないらしい。すでに荷物は3階にある。粘って交渉するが、どうしてもだめだと言う。△○飯店なら外国人も泊まれるからそこへ行け、という声に送られて街に逆戻りだ。
△○飯店はふたりとも気に入らない。外国人料金が高い上、けばけばしく、フロントの態度も悪い。とりあえず押さえということにして、カンを頼りにさらに歩く。バスターミナルや駅周辺に安宿がある確率は高いが、今回はすでに両方あたっているので後はカンに従うしかないのだ。
街を見物しながら歩いているうちに、あることに気づいた。街の人々の顔が3〜4種類しかなく、来る人来る人みんなさっき見た人と同じ顔つきなのだ。クマプーも気づいて、ふたりで「あの人はさっきのおばちゃん!あれは眼鏡屋のおやじ」と分類ゲームが始まった。
写真を撮ったり、人々を観察したりしながら歩いていたら、「招待所」の看板を発見。看板は路地の入り口にあって、どうやら宿は路地の奥らしい。
路地を入った左側に 「五番町夕霧楼」 といった趣の古めかしい招待所があった。しかしフロントと思しき場所に人気はない。宿の雰囲気が気に入ったのでしばらく待つことにしてバックパックをおろし、路地を行く人を観察する。と、ほどなくひとりのおばちゃんが現れ、料金その他の説明をしてくれる。OK、泊まろう、ということになったのだが、どうやらこのおばちゃんは宿の人ではない、もしくは宿泊者選定決定権がない、もしくは上司恐怖症のようで、XXが来るまでもう少し待てと言う。我々は庭のベンチで横になってXXを待つことにした。
小一時間も待ったろうか、XXは来ない。おばちゃんの説明を再度よく聞くと、どうやらここは軍の招待所で、おばちゃんは軍の関係者以外の一般人や外国人を泊めていいかどうかわからないらしい。XXがいつ来るかわからないし、来ても泊まれるとは限らないから知ってる宿に案内するという。折から降り出した雨の中、おばちゃんに借りた傘を差して、おばちゃんの後を5分ほど歩くと中規模の宿に着いた。
中国人
クマプーの体験によると中国人は徹底した個人主義で、親切なんて言葉はない。チケット売り場なんかでもちょっと言葉が通じないと「没有」(ないよ!)と言われて、売ってもらえない。とにかくなんでも「没有」だから、いやになる、ということだったんだけど、親切なおばちゃんじゃないか。後で案内料を請求されるのかと思ったけど、そんなこともない。やっぱり雲南は中国一般と違うんだろうか。
雨の中を帰るおばちゃんを見送って、宿のフロントへ。ここのお姉ちゃんは片言の英語を話す。本当は夕霧楼に泊まりたかったけど、まあいいか、とあきらめて投宿。
翌日はまずチケットの確保にバスターミナルへ向かう。情報収集の結果、石屏始発のバスはなく席も始発地でほとんど売り切れてしまうので、四双版納方面に向かうには2〜3日空席待ちをするか開遠まで戻って始発を捕まえた方がいい、ということが判明した。
空席待ちをしても乗れるかどうかわからない。開遠へ戻るなら午後の汽車だが、さてどうしよう。まず飯を食おう、と飯屋を探すがそれらしきものがない。歩き回るうちに、いつのまにか荒物屋や倉庫が並ぶ通りに紛れ込んでしまった。倉庫にかかっている看板を見たら、あれ、これは倉庫じゃなくて小さなバスターミナルだぞ。飯はさて置きちょっと聞いてみようよ、とクマプーが聞きに行く。すぐにチケットを手にクマプーが戻って来た。明日の朝のバスチケットが2枚だけ残っていたので、確保したという。元江、墨江を経て思茅まで行く長距離バスだ。
「チケット売りのおばちゃんが何かわからないことを言ったけど、とにかく思茅に行くことだけは確認した」
とクマプー。これで前進だ!
思茅まで行けば景洪は目と鼻の先。景洪は四双版納の中心都市で、各地へのアクセスに便利がいい。我々が目指すラオス国境へもバスがでているはずだ。進路が決まって安心した我々は、昨日汽車から見て目をつけていた線路向こうの古い町並みを見に行くことにした。その一角だけ古い、雰囲気のある建物が集まっていて、路地が迷路のように走っている。なぜか豆腐を作っている家が何件もあって、湯気の上がっている湯葉が何枚も軒先に乾されている。屋台の麺売り(本当に麺だけ売っている。麺を買って家で汁を作って食べるのだ。その場で食べられれば食べようと思ったのだが、それはできなかった)や共同井戸、古寺などを写真に撮り、犬に吠えられて2時間ほどうろついた。
夕方、駅前のそそるディスプレーの温泉に行く。入ったところは田舎のお土産物屋風で、背の低いガラスのショウウインドウが並んでいる。真ん中におばちゃんやらお姉ちゃんやらがいて、タオルや歯磨き、シャンプーなんかとともに入浴券も売ってくれるのだ。
中は男女に分かれていて、結構大きな湯船と、竹から勢いよくお湯が落ちている「打たせ湯」風な装置のある場所がある。地元の人は下着のまま浸かるようで、実際浸かった後下着やタオルを洗濯しているおやじもいる。我々は当然日本風にすっぽんぽんでお湯に浸かる。ちょっと熱めのいいお風呂であった。
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