先日、民主記念塔の近くのマクドナルドに入ったときのことです。

　注文しようと思ってカウンターの前に並んでいて、フト気がついたら僕のすぐ後ろに色黒で臭くて巨体の男が立っている。体が触れるくらい近寄って気持ち悪く、ジミー金村かと思ったけどタイ人でした。

　順番を抜かそうとする厚かましいタイ人だろうと思ってにらみつけてやったんですが、目をこっちと全然合わそうとせず、じっとメニューを見つめています。でも、金を持ってる感じなんて全然しないくらい貧しそうななりで、外で出会ったら乞食に見えるくらい変なヤツでした。

　藤井さん、これってなんでしょうか？

藤井　「ジミー金村かと思った」ってのが笑わせるなあ。でも、これでどんな風体のヤツかすぐにイメージできたけど、投稿者はカオサンに長いと見た。

ブラ　そんなことは尋ねてない。さっさとこの報告を分析せよ。俺が思うに、こいつはピックポケット（注：スリのこと）じゃないのか。

藤井　俺もそう思うな。実はタイでなくベトナムでなんだが、これとほぼ同じ体験が俺にはあるよ。サイゴン市内で写真を撮ってたら後ろにぴったりくっついているベトナムの女に気づいてね。俺は見上げるように建物の写真を撮っていたんだが、女がその背後で同じように見上げてる。気色悪かったんで「なんだこのアホウは？」って感じでマジマジと顔をのぞき込んでやったんだが、目線はびくとも動かさずにずっと見つめてる。たぶん、さあ犯行に及ぼうと思ったときに俺が気づいたんで、動揺を隠すために見物してるふりを続けたんじゃないのかな。

ブラ　「なにしてるんだこのアホウは？」と向こうも不審に思って一緒に見上げていたってのは？（笑）

藤井　そういう体験も何度もあるけど、そのときは違ったね。もうガンを飛ばしてるような感じで正面から顔をのぞき込んだのに、ぴくりとも動かないんだもん。目を合わすと腹の内がバレるんで、視線を合わさないよう努力していたんだと思う。だっておかしいもん。逆痴漢かと思うくらい迫っていたんだから。

ブラ　そうやって触らせて、「キャー、この人痴漢よー！」って騒ぐのが目的だったとか？

藤井　騒いだら自分の方が不利になるような感じの貧しそうな女だった。だから、それはないね。

ブラ　じゃ、今回のこの報告の男は？

藤井　マクドナルドの店内で財布を抜こうと考えたんだろう。外から見えるくらいはっきり尻のポケットに財布が入っていたのかもしれない。どうですか、流しのバックパッカーさん？

ブラ　店内で堂々の犯行か。でも、そんな汚らしい格好の男が一般客に混じって並んでいるだけで目立つと思うんだがね。

藤井　だからこいつはプロじゃないと思うね。だいたい臭いデブ男に近寄られたら誰もが不快感を持つよ。その時点で失敗してる。

ブラ　案外、普通の雑踏の中じゃ成功してるのかもしれないね、この男は。