少し前の話なんですが、夜にペッブリー通りのバス停に座ってバスを待っていたら、上半身裸のタイ人の男がふらふらと歩いてきて、持っていた雑誌を丸めたと思ったら、いきなりそれで私の頭をバシン！と殴っていきました。

　怖くてどうすることもできませんでした。ほかにもバスを待ってる人は２人ほどいましたが、みんな震えてました。

　一回殴っただけでまたふらふら歩いてどこかへ行きましたが、あれが固い鉄棒だったり石だったりしてもおかしくなかったと思います。

　タイに住んでいる限り、安全は遠いものと覚悟していますが、それでもやっぱり怖かったです。

藤井　しかたがないって言えばしかたがないかな。夜のバス停はけっこう怖い感じがするね。特に薄暗いところは。

ブラ　たしか日本人の男が同じようにバス停でバスを待ってて刃物で刺されたっていう事件があったんじゃないか？

藤井　サイアム・スクエアのすぐ横のバス停だよ。持ってたナイフか包丁で胸をグサーッとひと突きだ。命に別状はなかったが、関係者の話によるとそれはただの幸運で、死んでもおかしくない刺され方だったらしい。

ブラ　恨みとかそういう線？

藤井　いや、短期の旅行者だったから、それはないらしい。通り魔だろうね。このバス停のあたりはけっこう暗いんだよね。街の真ん中だから浮浪者も多くて、接着剤とか吸ってるヤツも実は多くいるんだ。俺はよく見かけるよ。

ブラ　たしかに上半身裸でふらふらしているやつは避けた方がいいな。目なんか見るまでもなく、完全にイッてる連中が多いよ。

藤井　俺も上半身裸でラリッて拳銃を振り回してるヤツに遭遇したことがあるよ。足に来てたから張り倒すのは簡単だったが、拳銃じゃなくて手榴弾とか持ってたらどうしようもならん。

ブラ　通り魔事件って、けっこうあるのかな。

藤井　あるって聞いてるけどね。凶器を持ってなくても、すれ違いざまに女の子の尻とか胸とかに触っていく異常者の話はよく聞く。

ブラ　それはただの痴漢じゃないのか？

藤井　それがエスカレートしていくと、相手を傷つけないと満足しなくなってるんじゃないかな。バイクでこれをやるヤツもいてね、対抗してきてすれ違いざまに胸を触るんだが、スピードが出ているもんだからラリアートみたいになっちゃう。やられた相手は転倒だよ。

ブラ　ソンクラーンなんかで、バイクに乗ったヤツが女の子のほっぺたに白い粉を塗りつけようとするじゃないか？　あれ、よく見てるとほっぺたを狙おうと思ってヒジを曲げてるから、スピードが出すぎてアックスボンバーになってるヤツもいる。

藤井　でもまあソンクラーンの場合は逆襲を食らって転倒して期せずして路面にピープルズ・エルボーを食らわしてるバカもいるよ（笑）。

ブラ　しかし、いつだったか自分のエイズ感染した血液を注射器に入れて道行く人に刺し回ってた通り魔もいたな。

藤井　怖い話だよなあ。でも、そういう感じのヤツもまた、かなりいるって話だよ。すれ違いざまに爪でひっかいていく異常者もいるらしいし。

ブラ　怖い国だな、やっぱりタイは。

藤井　油断はできないと思うね。最近は夜もけっこう明るくなっているけど、明るいのはそこだけで、数歩離れると相変わらず真っ暗だったりする。暗闇は避けるか、防衛手段を事前に取っておくしかないだろうね。

ブラ　防衛手段って言ってもなあ。みんな護身術をマスターしているわけでもないし。

藤井　いつだったか知り合いの女の子が日本の防犯グッズのパンフレットを見ていて聞くんだよな、「このベルはなんのためにあるんだ？」なんて。襲われたときに鳴らすんだよって言ったら、「タイじゃ意味ない」って。タイじゃ、鳴らしても助けに来る人なんていなからだと。

ブラ　日本でもそうだな。昔から言うじゃないか、「助けて！」って言っても誰も助けに来ない、そういう場合は「火事だ！」と言うんだって。

藤井　ま、何度も言うけど、君子危うきに近寄らず、だ。危なくなる前に逃げるが肝心。これはアジアの基本だよ。

１．アジアの夜は危険だという認識を持つ。

２．暗闇で１対１になるシチュエーションを作らない。

３．安全は金で買おう。